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給与債権の差押の場合の「差押禁止債権の範囲の変更の申立て」

2022年01月27日

 判決や和解調書,公正証書などで,金銭の支払約束をしていても,支払ってこない債務者に対し,債権者は預金や,給料などの債権差押をすることができます(民事執行法152条)。

 しかし,差押の対象が,債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権(同条1項1号)と、給料や賞与等の債権及びこれらの性質を有する給与に係る債権(同項2号)については、原則として4分の3に相当する部分が差押禁止債権となっています。

 この規定による差押禁止の範囲は画一的なものですので、比較的少額の給料等の債権が差し押さえられるような債務者が最低限度の生活を維持することが困難となり得る場合など個別具体的事情に合わせて、債務者に差押禁止債権の変更の申立てが認められています(同法153条)。

 しかし,この制度は十分に活用されておらず,その原因として,

① そもそもこの制度が十分認知されていないこと,

② 差押禁止の範囲の変更を短期間に申し立てることは事実上困難であること

が指摘されていました。

そこで,令和元年民事執行法の改正(令和2年4月1日施行)により,

① 裁判所書記官が、差押命令を債務者に送達するに際し、差押禁止債権の範囲の変更の申立てをすることができる旨を教示しなければならないと規定されました(法145条4項)。

  大阪地方裁判所のHPでも,Q&Aで,手続につき情報提供がなされています。

② また,金銭債権の債権執行においては、債権差押命令が債務者に送達された日から1週間が経過すれば債権者が直接その債権を取り立てることができることになっていたところ,給与等の債権差押えがされた場合の特例として、4週間を経過しなければ取立ができないとして,債務者が準備をして、差押禁止債権の範囲の変更を申し立てる時間的猶予を与えることになりました(法155条2項)。

もっとも、差押えの対象が給与等債権である場合であっても、差押債権者の債権に扶養義務にかかる金銭債権(法151条1項各号)が含まれているときは、原則に戻り,1週間で取り立てることができるとされています(法155条2項括弧書き)。