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成年後見人は「インフルエンザ予防接種」に同意できるか?
2017.11.10

11月となり,インフルエンザ予防接種の季節となりました。

先日,私が成年後見人であるご本人が入院している病院から,「インフルエンザの予防接種の申込みをされるか,検討して連絡ください。」との連絡がありました。

しかし,成年後見人には,医療契約締結のための法定代理権はあっても,医療同意権(手術や治療行為といった医的侵襲行為についての同意権)はないとされています。

医療同意権を定めなかった理由は,立法担当者の説明では,

「成年後見の場面における医的侵襲に関する決定・同意という問題は,一時的に意識を失った患者又は未成年等に対する医的侵襲に関する決定・同意と共通する問題であり,それ一般の場合における決定・同意権者,決定・同意の根拠・限界等についての社会一般のコンセンサスが得られているとは到底言い難い状況の下で,本人の自己決定及び基本的人権との抵触等の問題についての検討も未解決のまま,成年後見の場面についてのみ医的侵襲に関する決定・同意権に関する規定を導入することは時期尚早」とのことです。

厳密にいうと,インフルエンザ予防接種の申込みをすることも,医的侵襲行為の同意権がない成年後見人はできないことになってしまいます。

さて,どうしてものか?と思っていたところ,学説上,医療同意権肯定説・限定的肯定説というものがあると教えてもらいました。

 

限定的肯定説をとる上山泰「専門職後見人と身上監護」民事法研究会p133~によれば

「利用者が同意能力を欠く状態にあることを前提としたうえで

① 病的症状の医学的解明に必要な最小限の医的侵襲行為(触診,レントゲン検査,血液検査等)

② 当該診療契約から当然予測される,危険性の少ない軽微な身体的侵襲(一般的な投薬・注射・点滴,骨折の治療,傷の縫合等)

その行為が本人の推定的意思に合致するか,あるいは少なくともこれに反しない場合は

③ 健康診断および各種検診(ただし,重大な手術に匹敵するような危険性のある検査は除く)

④ 各種予防接種の受診(施設等で実施されるインフルエンザの予防接種等)

についても,医療同意権を認めてよいと思います。

とあります。

この見解によれば,成年後見人にも,ンフルエンザの予防接種の同意権もあり,となります。

なるほど。