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子の引き渡しの間接強制の申立は権利濫用とされたケース・・最高裁
2019.05.23

最高裁判所の決定(平成31年4月26日)で,別居している夫婦の間の子が,夫(父)と生活をしているところ,妻を監護者とし,夫に対し子を妻に引き渡す旨の家庭裁判所の審判に基づいて,妻が申立をした間接強制の申立を「権利の濫用であって認められない。」と判断されました。

 

家庭裁判所が下した審判に基づく強制執行が,なぜ,権利濫用?と不思議に思います。

 

一般的に,子の引き渡しがスムーズにできない場合,審判に基づき,強制執行できるとされており,その執行法として,執行官に対し,子を連れてきてもらう直接執行の方法と,相手方に子を引き渡すよう命じ,それを履行しないときは1日○○万円を支払うよう命じる間接強制の方法とが認められています。

 

今回の最高裁判所判決においても,

「子の引き渡しの審判は,家庭裁判所が,子の監護に関する処分として,一方の親の監護下にある子を他方の親の監護下に置くことが子の利益にかなうと判断し,当該子を当該他方の親の監護下に命ずるものであり,これにより子の引き渡しを命ぜられた者は,子の年齢及び発達の程度その他の事情を踏まえ,子の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ,合理的に必要と考えられる行為を行って,子の引き渡しを実現しなければならないものである。

このことは,子が引き渡されることを望まない場合であっても異ならない。」

として,子どもが引き渡されることを拒絶する意思を表明していたとしても間接強制決定することはできるとされています。

 

ところが,今回の事例は,間接強制の申立の前に,直接執行(執行官に対し,子を連れてくるように申立をする)の際に,子(9歳7カ月)が引き渡されることを拒絶して呼吸困難に陥りそうになったため,執行を続けると心身に重大な悪影響を及ぼすとして執行不能とされたり,人身保護請求も棄却されたりした状況下で,なお,間接強制の決定を求めることは苛酷執行であり,権利の濫用として認められないと判断されました。

 

そもそも,子の利益にかなうように監護者をどちらにするか判断すべき家庭裁判所が,子が呼吸困難になるほど引き渡しを拒絶する親を監護者として指定することに至ったのか?不思議ですが,子の年齢が小さい場合,子の意思をどこまで尊重すべきか,難しい問題だと思います。