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裁判手続のIT化の第一歩
2020.10.30

 新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言が,令和2年4月8日,発出されました。

 すでに,「不要不急の外出は控えるように」との声かけがなされている中で,緊急事態宣言が発出されそうとの報道がなされており,宣言が発出された場合,すでに予定されている裁判所での訴訟,調停などの期日はどうなってしまうのか?裁判所に問い合わせても,明確な説明を受けることができませんでした。

 緊急事態宣言が発出された途端,裁判所から「1か月先の5月6日までに指定されている期日は取り消します。」との連絡が来ました。

 裁判所での手続きは,権利関係に関する重要な手続であるので,「不要不急ではない」と思っていたので,裁判所の方針として,緊急性の高い事件は取り扱うが,原則として一律,裁判手続の期日が取り消されたのは,非常に驚きました。さらに,緊急事態宣言が5月31日まで延長され,いつ,手続きが再開されるのか分からない状況が続きました。

 2ヶ月間近く見通しがたたない状況で,依頼者の方も,私も,裁判所の職員も,かなりストレスがたまったように思います。

 

 

 かねてより,裁判手続のIT化が言われており,令和2年2月から,フェーズ1として,Web会議を利用した手続が開始されると言われていましたが,私自身,Web会議を経験したことがありませんでした。

 しかし,緊急事態宣言解除後,Web会議を利用した手続を多く経験することになりました。

 

 

 それまで,基本的に裁判所に出向いて対面で手続きを行うために,期日を指定するにも,裁判所と双方の代理人弁護士が裁判所に一堂に会する必要があるため,日程調整をするのに苦労が大きかったのですが(当事者が複数だったり,弁護士が複数人だったりするとなおさら),事務所に居ながらにして参加できることから,裁判所への往復の時間を考える必要もなく,期日が指定しやすくなったように感じます。

 また,裁判所へは紙で書面を提出していることから,裁判官から,何か指摘されたときに,すぐ確認できるように,裁判所へ重い記録を持って行っていたことも,事務所にいれば,そのまま記録を見ることができます。

 これまでも電話を利用した手続はありましたが,顔が見えず,非常にやりづらかったことから比べると,複数人が参加していても,Web上で顔を見ることができるで,意思疎通ができていることを各段に実感することができます。

 

 

 フェーズ1は,現行の民事訴訟法における「書面による弁論準備」として行われているため,準備書面の提出はできるが,口頭弁論期日での手続ではないので,陳述はできないとか,取り調べの対象となる文書の写し,証拠説明書の提出はできるが,証拠の取り調べはできないようです。

 今後,フェーズ1,2,3と進んでいくようです。

 いままで,裁判のIT化の必要性が言われつつも,私自身,ピンと来ていなかったこともありますが,コロナウィルス感染症による緊急事態宣言を経験して,必要性である上,有用なものであると実感しています。