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「異議なき承諾」をしてしまった・・・過払金請求できるか?
2015.06.02

消費者金融業者の統廃合により,当初,取引していた業者から別の業者へ貸金債権を譲渡したという「債権譲渡のご通知」が届くことがあります。

その際,借り手として,当初の業者との間で過払いの状態になっていることを前提とした計算をしないまま貸金残債権の元本の額が○○万××××円であることを認めてしまった場合,貸金債権を引き継いだ業者に対して,当初の業者に利息を払い過ぎていた状態であったとして過払い金の返還請求できるでしょうか?

 

民法468条1項前段で,「債務者が異議をとどめないで債権譲渡の承諾をしたときは,譲渡人に対抗することができた事由があっても,これを譲受人に対抗することができない。」となっていることから,「当初の業者に利息を払い過ぎていた状態であったと言えない。」とも考えられるのですが,この点について,平成27年6月1日,最高裁判所判決がありました。

 

この点,最高裁判所は「民法468条1項前段の趣旨は,譲受人の利益を保護し,一般債権取引の安全を保障することにある。」「単なる承諾のみによって,譲渡人に対抗することができた事由をもって譲受人に対抗することができなくなるという重大な効果を生じさせるものであり,譲受人が通常の注意を払えば上記事由の存在を知り得たという場合にまで上記効果を生じさせるというのは,両当事者間の均衡を欠くものと言わざるをえない。」として,「債権を引き継いだ業者が,知らなくても,過失があるとき」は,譲渡人に対して主張できた事由を主張できるとの判断がなされました。

 

最高裁判所の指摘するような問題もあってか,今国会に提出されている民法の改正案では,「468条1項を削除する。」となっています。