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「送達」の重要性
2016.09.05

通常は,訴訟を提起する前に,相手方と任意の交渉などをして解決を図るのですが,先日,任意交渉を経ることなく訴訟を提起する方が早期解決が図れることから,相手方に事前に接触することなく訴訟を提起した事件がありました。

そうしたところ,裁判所から,「訴状記載の住所から転送されて「送達」されたよう。今後のこともあるので調査した方がいいのでは・・・。」と連絡がありました。

被告の住所は住民票上の住所を記載したし,ともかく転送されはしたものの,「送達」されたのだから,調査云々とは大げさだな・・・と思っていたところ,下記のような判断が最高裁判所でなされたのを見つけました。

 

訴訟は、会社と代表者のほか、役員として登記されていた夫婦らも被告としたもので,一審東京地裁は、会社代表者と夫婦らに全額を賠償するよう命令。二審東京高裁も一審を支持した。

代表者は上告しなかったが、夫婦は「高裁判決後に原告側代理人から電話を受け、初めて裁判のことを知った」と主張して上告。裁判所が会社に送った訴状などは受け取っておらず、二審から就いた会社側の弁護士に提出された委任状も偽造されたものだと訴えた。

第1小法廷は「会社事務所は夫婦の就業場所ではなく、訴状は有効に送達されていない。委任状も夫婦の意思に基づいて作成されたとは認められない」と認定し、審理をやり直すべきだと結論付けた。

 

知らない間に被告として賠償義務が認められてしまった夫婦も驚いたと思いますが,思いますが,一審・二審でも勝訴判決を得たにもかかわらず,「送達」が有効ではないと,始めからやり直しをしなければならない羽目となった原告(原告代理人弁護士)の徒労感はいかばかりかと思いつつ,「送達」の重要性を改めて認識したところです。